賢者の贈り物2

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■ 『賢者の贈り物』The Gift of the Magi(2)

オー・ヘンリー作 結城浩訳

賢者の贈り物1から読む

デラが立ち止まったところの看板には、
「マダム・ソフロニー。ヘア用品なら何でも。」
と書いてありました。
デラは階段を一つかけのぼり、胸をどきどきさせながらも気持ちを落ち着けました。
女主人は大柄で、色は白すぎ、冷ややかで、とうてい「ソフロニー」という名前のようには見えませんでした。

「髪を買ってくださいますか」とデラは尋ねました。
「買うさ」と女主人は言いました。「帽子を取って見せなさいよ」
褐色の滝がさざなみのようにこぼれ落ちました。

「20ドル」手馴れた手つきで髪を持ち上げて女主人は言いました。
「すぐにください」とデラは言いました。

ああ、それから、薔薇のような翼に乗って2時間が過ぎていきました。
…なんて、使い古された比喩は忘れてください。
デラはジムへの贈り物を探してお店を巡っておりました。
そしてとうとうデラは見つけたのです。
それは確かにジムのため、ジムのためだけに作られたものでした。
それほどすばらしいものはどの店にもありませんでした。
デラは全部の店をひっくり返さんばかりに見たのですから。
それはプラチナの時計鎖で、デザインはシンプルで上品でした。
ごてごてした飾りではなく、素材のみがその価値を主張していたのです ―― すべてのよきものがそうあるべきなのですが。
その鎖は彼の時計につけるのにふさわしいとまで言えるものでした。
その鎖を見たとたん、これはジムのものだ、とデラにはわかりました。
この鎖はジムに似ていました。
寡黙だが、価値がある ―― この表現は鎖とジムの両者に当てはまりました。
その鎖には21ドルかかり、デラは87セントをもって家に急いで帰りました。
この鎖を時計につければ、どんな人の前でもちゃんと時間を気にすることができるようになるでしょう。
時計はすばらしかったのですが、鎖の代わりに古い皮紐をつけていたため、ジムはこそこそと見るときもあったのです。

デラが家に着いたとき、興奮はやや醒め、分別と理性が頭をもたげてきました。
ヘアアイロンを取り出し、ガスを着けると、愛に気前の良さを加えて生じた被害の跡を修繕する作業にかかりました。
そういうのはいつも大変な仕事なのですよ、ねえあなた ―― とてつもなく大きな仕事なのですよ。
40分のうちに、デラの髪は小さく集まったカールで覆われました。
髪型のせいで、まるで、ずる休みした学童みたいに見えました。
デラは、鏡にうつる自分の姿を、長い間、注意深く、ためつすがめつ見つめました。

「わたしのことを殺しはしないだろうけれど」とデラは独り言をいいました。
「ジムはわたしのことを見るなり、コニーアイランドのコーラスガールみたいだって言うわ。
でもわたしに何ができるの ―― ああ、ほんとうに1ドル87セントで何ができるっていうの?」

7時にはコーヒーの用意ができ、フライパンはストーブの上にのり、チョップを焼く準備ができました。
ジムは決して遅れることはありませんでした。
デラは時計の鎖を手の中で二重に巻き、彼がいつも入ってくるドアの近くのテーブルの隅に座りました。
やがて、ジムがはじめの階段を上ってくる足音が聞こえると、デラは一瞬顔が青ざめました。
デラは毎日のちょっとしたことでも小さな祈りを静かに唱える習慣がありましたが、このときは
「神さま。どうかジムがわたしのことを今でもかわいいと思ってくれますように」
とささやきました。

ドアが開き、ジムが入り、ドアを閉めました。
ジムはやせていて、生真面目な顔つきをしていました。
かわいそうに、まだ22歳なのに ―― 彼は家庭を背負っているのです。
新しいオーバーも必要だし、手袋もしていませんでした。
ジムは、ドアの内で立ち止まりました。
うずらの匂いにじっとしている猟犬と同じように、そのまま動きませんでした。

【版権表示】Copyright (C) 1999 Hiroshi Yuki (結城 浩)
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